亜鉛合金は、独自の特性の組み合わせと優れた適応性により、さまざまな産業分野で広く普及している汎用性の高い材料です。
この記事では、亜鉛合金の組成、製造工程、鋳造方法、産業用途、持続可能性について詳しく解説します。
亜鉛合金とは?
亜鉛合金は、主成分の亜鉛に特定の特性を高める他の元素を加えた金属です。
これらの合金元素を添加することで、純亜鉛の機械的・物理的特性や耐食性を調整・最適化でき、幅広い用途に適した材料となります。
亜鉛合金の組成

亜鉛合金は通常、亜鉛を主成分とし、次のような合金元素をさまざまな割合で含みます。
- アルミニウム亜鉛合金の強度、硬度、鋳造性を高めます。亜鉛合金のアルミニウム含有量は通常4%~27%です。
- 銅亜鉛合金の強度、硬度、耐食性を高めます。銅の含有量は通常0.5%~3%です。
- マグネシウム亜鉛合金の延性と耐衝撃性を高めます。マグネシウムの含有量は通常0.01%~0.05%です。
- 鉄亜鉛合金の耐クリープ性と寸法安定性を高めます。鉄の含有量は通常0.1%未満に制限されます。
- 鉛亜鉛合金の被削性を高めますが、環境および健康上の懸念から段階的に使用が廃止されています。鉛を含む場合、その含有量は通常0.005%未満です。
亜鉛合金の組成は、求める特性を実現し、用途の要件に適合するよう慎重に選定されます。この組成調整の柔軟性により、亜鉛合金はさまざまな産業分野の具体的なニーズに応えられます。
亜鉛合金の特性
亜鉛合金は、幅広い用途で選ばれる次のような特性を備えています。
機械的特性:
- 高い引張強さ(最大400 MPa)
- 良好な硬度(80-120 HB)
- 優れた寸法安定性
- 優れた耐衝撃性
物理的特性:
- 低融点(約380-390°Cまたは716-734°F)
- 高い熱伝導率および電気伝導率
- 優れた鋳造流動性
- 比較的低い密度(6.6-7.1 g/cm³)
耐食性:
- 大気環境で優れた耐食性
- 水、アルカリ、有機化学物質に対する良好な耐性
- 酸性環境では腐食しやすい
亜鉛合金の組成や製造工程を調整すれば、特定の用途の要件に合わせて特性を調整できます。
この汎用性により、亜鉛合金は自動車、電気・電子、建設、消費財など、さまざまな産業で広く選ばれています。
亜鉛合金の製造と加工

亜鉛合金の製造・加工には、主に乾式製錬法と湿式製錬法の2つの方法があります。
乾式製錬法
乾式製錬法では、高温を利用して鉱石から亜鉛を抽出・精製します。主な工程は次のとおりです。
- 焙焼:閃亜鉛鉱(ZnS)などの亜鉛鉱石を、約900-1000°C(1652-1832°F)の温度で空気中において焙焼します。これにより硫化亜鉛は酸化亜鉛(ZnO)に変わり、二酸化硫黄などの不純物が除去されます。
- 製錬焙焼した酸化亜鉛を、立型レトルト炉やインペリアル製錬炉などの炉で約1100-1300°C(2012-2372°F)に加熱して製錬します。酸化亜鉛が溶融亜鉛に還元され、炉の底部に集められます。
- 合金化:溶融亜鉛に他の合金元素を加え、目的とする組成の亜鉛合金を製造します。
湿式製錬法
電解法とも呼ばれる湿式製錬法では、水溶液を利用して亜鉛を抽出・精製します。主な工程は次のとおりです。
- 浸出:亜鉛鉱石を硫酸、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの適切な試薬で浸出し、亜鉛を溶解させて亜鉛を多く含む溶液を作ります。
- 精製:亜鉛を多く含む溶液にセメンテーション、溶媒抽出、イオン交換などの精製工程を施し、不純物を除去して目的の純度にします。
- 電解:精製済みの亜鉛溶液に電流を流して電気分解を行い、陰極に高純度の金属亜鉛(99.99%以上)を析出させます。
- 合金化:高純度の亜鉛を溶融し、他の合金元素を加えて目的の組成の亜鉛合金を製造します。
亜鉛鋳造合金の概要
亜鉛鋳造合金は、主にZAMAK合金とZA合金の2系統に分類され、それぞれ特定の産業ニーズに応えるために開発されました。
ZAMAK合金
ZAMAK合金はダイカスト用に1920年代に開発された、実績のある亜鉛鋳造材料群です。
これらの合金は数字による等級で識別され、機械的特性のバランスと鋳造のしやすさで知られています。主なZAMAK合金は次のとおりです。
- ZAMAK 3:最も広く使われているZAMAK 3合金で、北米の亜鉛ダイカスト品全体の70%超を占めます。優れた鋳造性、高強度、良好な表面仕上げを備えるため、幅広い用途に適しています。
- ZAMAK 5:ZAMAK 5は、ZAMAK 3より機械的特性と耐食性に優れています。さらなる強度と耐久性が必要な用途に選ばれますが、ZAMAK 3より鋳造がやや難しくなります。
- ZAMAK 7:ZAMAK 7はZAMAK合金の中で最高の強度を発揮し、良好な鋳造性と寸法安定性も維持するため、高い性能が求められる用途に適しています。
- ZAMAK 2:使用頻度は比較的低いものの、ZAMAK 2はZAMAK合金の中で最高の硬度と強度を備えます。これらの特性が求められる用途に使用されます。
ZA合金
1970年代に開発されたZA合金は、亜鉛鋳造合金の中では比較的新しい材料群です。
アルミニウム含有量が高く、機械的特性が向上するとともに、優れた軸受特性を発揮します。主なZA合金は次のとおりです。
- ZA-8:ZA-8はZAMAK合金よりアルミニウム含有量が高く、優れた軸受特性と強度を備えています。これらの特性が重要となる用途に使われます。
- ZA-12:ZA-12はZA-8とZA-27の中間的な特性を持ち、良好な軸受特性、中程度の強度、優れた鋳造性を備えています。幅広い産業用途に適しています。
- ZA-27:ZA-27はアルミニウム含有量が高く、高強度や耐摩耗性を含む優れた機械的特性を発揮します。耐久性と耐荷重性能を最大限に求める用途に使われます。
ZAMAK合金とZA合金はいずれもダイカストに広く用いられます。溶融金属を高圧で金型に射出するこの工程では、複雑な形状を高精度に成形でき、後加工も最小限に抑えられます。
どちらの合金系統を選ぶかは、機械的特性、耐久性、鋳造のしやすさなど、用途ごとの具体的な要件によって決まります。
これらの亜鉛鋳造合金は汎用性と生産効率に優れ、さまざまな産業分野で高品質部品を大量生産するうえで欠かせない材料です。
亜鉛合金の用途
亜鉛合金は、機械的特性、耐食性、費用対効果を兼ね備えているため、幅広い産業で利用されています。主な用途は次のとおりです。
自動車産業
自動車分野では、高い強度、耐久性、優れた鋳造性を備える亜鉛合金が、さまざまな部品の製造に広く使われています。主な用途は次のとおりです。
- エンジン部品:亜鉛合金は、精度と強度が求められるキャブレター、燃料ポンプなどのエンジン部品の製造に使われます。
- シャシー部品:ブラケット、マウント、ハウジングなどの部品には、機械的負荷や環境条件に耐えられる亜鉛合金がよく使われます。
- 内装部品:優れた表面仕上げと耐久性が求められるドアハンドル、ノブなどの内装金具の製造に亜鉛合金が使われます。
電気・電子産業
亜鉛合金は、さまざまな用途に信頼性と耐久性をもたらし、電気・電子産業で重要な役割を果たしています。
- コネクターと端子:亜鉛合金は優れた導電性と耐食性を備えているため、コネクター、端子などの電気部品に適しています。
- ハウジングと筐体:電子機器を保護し、耐久性を確保するため、堅牢で精度の高いハウジングの製造に亜鉛合金が使われます。
建設産業
建設分野では、強度、耐食性、加工のしやすさが評価され、亜鉛合金が使われています。一般的な用途には次のものがあります。
- 建築金物:耐久性と意匠性が求められるドアロック、ヒンジなどの建築金物の製造に亜鉛合金が使われます。
- 構造部品:ブラケットや支持部材などの構造部品には、強度と長寿命を確保するために亜鉛合金が使われることがあります。
消費財

消費財業界では、亜鉛合金の汎用性と意匠性を生かし、幅広い製品を製造しています。
- 家電製品:洗濯機や冷蔵庫などの家電製品の部品には、信頼性と長寿命を確保するために亜鉛合金が使われています。
- 装飾品:複雑な形状に鋳造でき、高い水準で仕上げられるため、亜鉛合金は宝飾品、置物、インテリア装飾品などの製造に使われます。
医療機器
医療分野では、生体適合性と精度が求められるさまざまな機器や部品の製造に亜鉛合金が使われています。
- 手術器具:必要な強度と精度を備える亜鉛合金は、各種の手術器具や医療機器の材料に使われています。
- 医療機器:医療機器のハウジングや金具などの部品には、亜鉛合金の耐久性と耐食性が生かされています。
航空宇宙産業
航空宇宙分野では、高い比強度と精度が求められる部品に亜鉛合金が使われています。
- 航空機部品:強度と耐久性が特に重要となるブラケットやハウジングなど、特定の航空機部品の製造に亜鉛合金が使われます。
通信
通信分野では、高い精度と耐食性が求められる部品の製造に亜鉛合金が使われています。
- アンテナ部品:亜鉛合金は、アンテナやその他の通信機器の部品に使われ、長期にわたる性能と信頼性を支えます。
亜鉛合金が産業用途で広く使われる理由

亜鉛合金がさまざまな産業用途で広く普及している背景には、次のような要因があります。
- 優れた費用対効果:亜鉛は比較的豊富で、他の金属より安価なため、亜鉛合金は大量生産に適した経済的な選択肢です。
- 優れた鋳造性:亜鉛合金は融点が低く流動性にも優れているため、複雑で精密な部品を欠陥を抑えて製造できます。
- 高い強度と耐久性:合金元素の添加により亜鉛の機械的特性が大幅に向上し、強度と耐久性に優れた部品が得られます。
- 耐食性:亜鉛合金は耐食性に優れており、過酷な環境での用途にも適しています。
- 汎用性:亜鉛合金は、自動車部品、電気部品、消費財、装飾品など、幅広い用途に使えます。
こうした要因により、高い性能と信頼性が求められる産業で亜鉛合金の採用が広がっています。
亜鉛合金の持続可能性
亜鉛合金には、持続可能性の面で次のような利点があります。
- リサイクル性:亜鉛合金はリサイクル性に優れています。製造工程で生じた金属くずや使用済み製品を、品質を大きく損なうことなく再溶解して再利用できます。
- エネルギー効率:亜鉛合金は融点が低いため、他の金属に比べて加工に必要なエネルギーが少なく、全体的なカーボンフットプリントを低減できます。
- 耐久性:高い強度と耐食性により製品寿命が延び、頻繁な交換の必要性が減るため、資源の節約につながります。
- 廃棄物の削減:先進的な鋳造技術と精密な製造工程によって廃棄物の発生を抑えられるため、亜鉛合金はより持続可能な選択肢となります。
こうした持続可能性の利点を生かすことで、産業界は環境負荷を軽減し、より循環型の経済を促進できます。
亜鉛合金は、優れた特性、費用対効果、持続可能性を兼ね備えた注目すべき材料です。 その汎用性により、自動車部品から消費財まで、さまざまな産業用途に欠かせない材料となっています。
技術の進歩とともに新たな用途が生まれるなか、亜鉛合金は今後も私たちの暮らしを形づくるうえで重要な役割を果たし続けるでしょう。
